2014年8月11日月曜日

「ガラスの境界線」を破った男 [エベレスト初登頂]




1953年5月29日、人類は初めて標高8,848mに達する。

”エベレスト初登頂”というこの偉業を成し遂げたのは、ニュージーランドで養蜂業を営んでいた33歳の「エドモンド・ヒラリー」。



その息子、ピーター・ヒラリーは語る。

「父は年に何回かは、登山やキャンプなど必ずどこかへ連れて行ってくれた。僕が初めて山の頂へ達したのは9歳のとき。シェルパ→僕→父の順にロープでつないで雪山を登っていると、僕が足を滑らせてズルズル落ちて。父がとっさにロープを引くと、僕の体がぽ〜んと宙に! まるでバンジージャンプでした(笑)」

ピーターは自然な成り行きで登山家になると、1990年にエベレストにも登頂を果たした。

「父は、人々の”できない”という思い込み、いわば”ガラスの境界線”を破って、のちの人への道を切り開きました。僕自身、初のエベレスト登頂で、こんなに大変だったのか! と実感しました。僕の挑戦は多くの前例がある中でしたが、父は違う。それは確かに偉業です」



ピーターの父、エドモンドがエベレスト初登頂後に口にした「I kicked the bastard off(あのロクデナシをやっつけてやったぜ)」というセリフは有名だ。

息子ピーターは言う、「それは古い親友との間に交わされた言葉で、父もまさか世界中に伝わるとは思っていなかったでしょう(笑)。よく”あの山を征服した”などと言いますが、そういう感覚ではありません。山は人間に小さな隙を与え、運が良ければ登らせてもらえる、そんな感じ」。



59歳のピーターは今も、大いにアウトドアをやっている。

「この2ヶ月で、1週間ヒマラヤでヘリスキーをしたり、ネパールからエベレストへ行って登山指導者の訓練プログラムを手伝ったり、息子とニュージーランドにあるルアペルという火山に登って山小屋で過ごしたりしました」

ピーターは続ける。「すべての人に登山をやって頂上を目指せとは言いませんが、やはり登山は人生観が変わります。恐怖に押し潰されそうになりながら登り、一寸先はどうなるかわからない。そういう緊張感の中では、本当に欲しいものは? 自分の人生の意味は? とイヤでも考えさせられます。それが登山の魅力であり、非常にパワフルな体験なのです」








出典:BE-PAL (ビーパル) 2014年 07月号 [雑誌]
「ピーター・ヒラリー氏が語る、父エドモンド・ヒラリーの偉業」



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