〜山と溪谷 2014年12月号より〜
テスター:HOBOJUN
衝撃的だった。これで時代は変わると思った。アウターシェルが新たなるフェイズに突入したことを実感できる一着だ。
本品は柔らかく動きやすいソフトシェルでありながら、全面に防風透湿メンブレンを内蔵していて、ハードシェルに近い防御力がある。さらにすべての縫い目にシームシーリングを施し荒天にも対応。袖口にはカフがないし、ジッパーも通常モデルなので降り続く雨に打たれ続けるとさすがに浸水するが、乾いた雪ならばまず問題ない。僕は小雨ぐらいならこれで出かけてしまうし、先日の台風の際もレインウェアを使わず、終日このシェルでやり過ごしてしまった。そこまでして着続けたのは、ひとえに着心地のよさ故。行動中も食事中も、テントでくつろぐときも脱がずに快適に過ごせる。なんならこのまま寝袋に入ってもいいほどだ。
「完全防水ではないシェルをベストバイにしてよいのか」という自問は強くあったが、それよりも4方向に大きく伸びる素材の着心地と、2万6,000g/m2/24hという高い透湿性能、そして山行のあらゆる場面で着用できる汎用性に軍配を上げた。長期山行にはこの上に着られる軽量レインシェルの携行を勧めるが、おそらく出番はほとんどないだろう。
補足解説:
このモデルに使われているのは「フッ素系防風メンブレン」を内蔵した柔らかで伸びのある生地。メンブレンというのは「皮膜」という意味で、ソフトシェル(soft shell)のジャケットにこの素材が入ったことにより、ハードシェル(hard shell)との境目を曖昧にした。
ゴア社の「ウインドストッパー」や、ボーラテック社の「パワーシールド」などがメンブレン入りソフトシェルの代表であり、完全防水とまではいかないものの、小雨や通り雨をしのげるくらいの防御力はもっている。
HOBOJUNは言う。
「僕は昨シーズンから各社のソフトシェルをテストしているが、正直言って『これでいいじゃないか』と思うことが多い。とくに1月2月の乾いた雪の中や、標高の高い山域ではハードシェルを上回る使い勝手のよさがある。とくかくしなやかで動きやすい。だから個人的には『山岳シェル=ハードシェル』という固定観念は、もうすっかり捨ててしまった」
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