2015年2月27日金曜日
テレマークを愛する、スリーピン金具
~ソウルスライド2015より~
1980年代はテレマークスキーヤーのことを「スリーピナー(3 piner)」と呼ぶこともあった。世界中でつくられるテレマーク靴のどの機種でもどのサイズでもこのラットトラップ型の単純な「スリーピン金具」ひとつで互換できた。究極の一極型全世界システムが完成していたのだ。
今でもスリーピン金具は健在だ。目白の某用具店ではシーズンに40?台ぐらい売れるそうだ。これだけ新しい用具が開発され、市場で売られるようになっても、未だにスリーピンしか使わないという人も健在だ。もちろんその筆頭は裏磐梯の小さなペンションを基地にして、「細板&スリーピン以外は認めない」と吠え続けているあの人=桐澤雅明その人だ。
その一派は表に出ない人を入れれば数10人はいる...のかな? その係累も全国にちらほらいて、北海道のお系=北村女史、広島の釣り師・植木庄司など、独自路線で一家をなしている名人が多いのだ。私自身もこの人たちには敬意を表している(リスペクト?と言うの)、当然、御本尊のスリーピン金具にもだ。
足になじんだ革靴と細く軽い板を、この片方185gのアルミ金具でかろうじて接続しただけの三点用具が、これまた信じられないほどの実用性と楽しい滑りを約束してくれるという事実は、ちょっと旧いテレマークを愛する者の心の奥底に必ずや埋まっているからだ。
「いいかげんなもの」を工夫して使いこなすことがテレマークの原点にある。どんどんどんどん捨てていき、最後に残ったものを研ぎ澄ませると、道具を手にした「自ら」がある。うまくターンできるのも転んでしまうのも、責任は道具にはない。
しかし20世紀の初めに踵(かかと)を固定する方向に分化(進化?)したスキーを、またそこまで遡って初めからやり直そうとしたとてつもなく不思議な生い立ちを持つのがテレマークスキーである。その行き着いた先が今なのだから、その起源を塗りつぶしては何も語れないというのも事実だろう。とはいえ、「みんなスリーピンに戻ろう」と言うのではない。どんなに新しいものが開発され、毎年新しくデザインされた製品が登場しても一向に構わない。発想も発展も自由だ。作るのも売るのも買うのも自由で楽しい。
大切なのは「胸の奥底にあるスリーピンが錆びずに光っていること」。楽しいと思う身体感覚だ。それを新しい塗装で塗り固めることなく、いつもどこかにちょっとだけでも見えるようにしておこう。
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ソース:ソウルスライド2015 (SJセレクトムック)
Review てれまくり2015
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