2015年2月24日火曜日

「すべてを受け入れる」 [長井三郎]


山に10日

海に10日

野に10日



そうした暮しが屋久島には伝えられてきたという。

山で獣を追い、海に魚を求め、荒地を開墾して作物をそだてる。



「ですから、島の暮しの底には諦観があるわけです。どうやっても自然には敵わない。島で暮らすということは、いいもの、わるいもの、『すべて受け入れること』なんです」

島に暮しつづける長井三郎さんは、そう言って微笑む。



「森に入ると、大きな木に出会います。すると、その大きさに圧倒されるんですよ。静かに、ずっと見上げていると、人間の小ささみたいなものが身に染みてきます。そして足元には、もっと小さなミツバチが飛んでいる」

大きな木、人間、小さな虫

自然の中では、それぞれの「分」がある。



分を知り、分をわきまえる。

それは小さくなるというよりはむしろ、大きくなるためだ。



「東京に出なければ、島の本当の姿に気がつかなかったかもしれません」

そう言って、長井さんは二カッと笑う。

「人は、帰るために外に出るのかもしれませんね。日常に帰るために旅にでる。そこに意味があるのかもしれません」










ソース:山と溪谷2015年3月号 特集「一人前の登山者になるためのセルフレスキュー講座」
長井三郎「屋久島発 晴耕雨読」




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