2015年12月20日日曜日

直滑降 [オーストリアスキー教程1957]



[オーストリア スキー教程 1957]


P. 12〜14


2. 直滑降


直滑降の姿勢は無駄な力を使わず、しかもいかなる動きにも即応しうるものでなければいけない。力の浪費を省くこと、および広い視野をもつという二つの要求をみたすのであるから、直立に近い高い姿勢となる。膝から下(脛)をよく前におし倒す。脛を前におし倒すと、解剖学的理由によって、足首の関節はしっかりひきしまり、もちろんスキーの操作も確実になる。また、正しい前傾姿勢をとるために必要な準備ができることにもなる。膝と腰はバネをたくわえ、また、あらゆる動きに即応するため軽くまげる。

横から見て、すくなくともスキーの上に垂直に立ち、また、いかなる変化にも応じて体を動かせるような印象をあたえる姿勢であるべきである。この「斜面に垂直」な姿勢にあっては、踵よりも親指のつけ根のほうにいくらか余計に体重がかけられねばならない。つまり、雪の状態が許すかぎり軽い「前がかり気味(Vorlagetendenz)」の姿勢をとるのがよい。両足は前後せずに殆ど揃え、両方のスキーに均等に荷重する。雪が深かったり、また変化のある場合には、多かれ少なかれ、その状態に応じて体をうしろにかける(Rucklage)とともに、足を前後して支持面を前後に伸ばすことが必要である。こうすれば、前にだしたほうの足で、いわば探りを入れることになるので、前からのショックにたいして確実さをますことができる。このような場合には、もちろん、うしろ足により多く荷重する。しかしながら雪の状態がよくて楽に回転しうるようなときには、両足を前後に開いていると、状況に即応して機敏に動作をおこす妨げとなる。

左右のスキーは、できるだけ揃えて細いシュプールで滑るようにすべきである。両足を揃えて細いシュプールで滑れば体の動きもまとまりがよくなり、また滑降の落ちつきと確実さをもたせるのにも都合がよい。氷化した雪のときには、必要に応じてシュプールを幾分ひろげたほうがよい。いくらか左右の間隔を広くしても膝をぴったりつけていれば、氷化したバーンにおいても軽くエッジを立てることができるから、十分な確実さを得るのにたいへん都合がよい。

腕は肘を軽くまげて楽にたもつ。腕はいつでも楽に無駄なく動かしてバランスをとり、またとっさの場合に応じて杖をつける用意がなければならない。共通した欠点は、両手を体側に力んで押しつけたり、両腕を不必要にひろげたりすることである。だらりと投げだしたように肩をさげ、ぶらりと腕をたらし、杖をだらしなくひきずるようでは、とうていとっさに体を動かすことはできない。しかしながら、滑降姿勢に最も多く見られる欠点は、胴体を前に突きだした姿勢で、こうした姿勢をとると両脚も硬直してしまって、尻もうしろに突き出ることが多い。

「基本姿勢」としては、シュプールの幅せまく、前がかり気味な、いつでも新たに動作をおこしうる、かなり直立に近い姿勢の習得をめざすべきである。この基本動作は、もちろん滑降の状況によって変わるものである。例えば傾斜のゆるい氷河などで長く真直ぐに滑降する場合には、無造作に体をゆるめた楽な「休息の姿勢」でよい。また雪が深かったり、変化のあるときには、後傾した、いわば何か待ち構えるような「防禦姿勢」をとらざるを得ぬことが間々ある(空気の抵抗を少なくするために深くかがんだ、したがって疲れることの多い姿勢で滑ることがあるが、これなどは、そのときそのときの事情と目的に応じてとられる例外的な姿勢の一つといえよう)。


斜面が急になる場合


これには、--とくに基礎訓練中は-- 身を沈め、姿勢を低くしながら前傾して通過するのがよい。こうすれば斜面に垂直な体勢をたもちうるので、雪面から浮きあがるようなことはない。上達した者は、良好な状態のときには、ただ直立した上体を前に傾けるだけで、この斜面に垂直な体勢をたもってゆける。


斜面がゆるくなる場合


これは、いま述べた斜面が急になるのとちょうど反対の場合で、体をのばして高い姿勢をとればよい。しかし、決して後傾に陥るようなことがあってはならない。すなわち、前、上に立ちあがるのであるが、急に平らになるようなところでは、どちらか一方の足を前に踏みだしてもよい。

逆斜面(のしあげ)の傾斜がしだいに緩くなる場合と同じである。ここでもいくらか低い姿勢から伸びあがってゆけばよい。こうすれば、押しつぶそうとする勢にたいして最もよくもちこたえられる。


大きな波形ののしあげ


さきに述べたものと同じ要領で、波ののしあげのところで体をのばす。だが、その頂点に達する前に適当な時期に低い姿勢になって前にかかり、斜面が急に落ちこんでもスキーをしっかり踏みおさえる用意をしなければならない。


小さい波


大きな波のときには、重心は、斜面に垂直な状態をはっきりと保ちつづけてゆくが、小さい波をいくつも越えてゆくときは、できるだけ同じ高さを保ちつづけてゆくようにする。

すなわち、波の谷では意識的に脚を(伸ばして)下におしつけ、また波の頭では下から突きあげられるままに脚をかいこんでゆく。このように、地面の凹凸を除去しながら乗り越えてゆくことは、後傾に陥らないために重要である。

上に述べたような地形を乗り切るときには、脚をちぢめて低い姿勢をしなければならないが、これは決して上体を前に突きだしておこなってはならないのであって、必ず脛を前に倒し、それに応じて膝をまげること(膝の前圧)によっておこなわねばならない。上体はできるだけ真直ぐにたもつ。


跳躍


跳躍は勢いよく跳ねのびることによって急にスキーが地面から離れ浮くことである。瘤のようにふくらんだところ、あるいは急に落ちこんでいるようなところは、このように空中に飛びだすのに適している。のみならず、このような地形のところでは別に飛びだそうとしないでも、ひとりでにスキーが雪面から浮くものである。スキーは空中にある間、平行に、左右ぴったりくっつけておかねばならないし、また、すぶに着地するのであるから、スキーのテールは決して下げすぎてはいけない。体は踏み切った瞬間にも、また飛行中も、ぐーっと前にだすようにしてゆかねばならない。脚は伸ばしたままでもよいが、しかし、空中を飛行する間、脚をちぢめてひきつけるほうが確実安定だとするものが多い。着陸は、一度ちぢめた脚を下に伸ばして、スキーをしっかりと踏みつけておこなう。着地のショックはスキーを前後してテレマーク姿勢に入って抜くのが有利である。着陸を滑らかにおこなうためには、必ず空中を飛んでいるあいだ前傾を十分にとり、したがって体は着地する前に適当に斜面に垂直な状態をたもっておかねばならない。述べる必要もあるまいが、前傾をしすぎたり、スキーの先を下げすぎると、頭から突っこんで危険な転倒をすることがある。長く飛ぶときには腕をまわしてバランスをとる。




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