2015年12月16日水曜日

技術解説 序言 [オーストリアスキー教程1957]



[オーストリア スキー教程 1957]


P. 8


技術解説

序言

初心者の滑り方も、根本的には熟達者と同じ運動特徴を示すべきであり、初心者はただ身のこなしが未熟であるにすぎないのであるから、以下の技術解説においてもスキー術の普遍的な基礎となる技術について述べることにする。

スキーの指導組織の発達した今日、いつ、どこへ行っても原則的には同じ技術が習えるようになっていなければならない。つまり、場所が異なり、別な教師についても、初めから習いなおすことなく、直ちに、さきへ進みうるようになっていなければならない。こうしておけば、個人的な特徴はスキー生活を続けるうちに自ら現われてくる。しかし、教える事柄そのものは、たいして相違あるものであってはならない。相違ありとすれば、同じ教材を生徒に応じて、どのように、どの程度におこなわせるか、つまり適用上の相違のみでなければならない。

滑降技術の今日の発達段階の重要な特徴は --技術全体を一貫しているものだが-- 踵を意識的に外へおしだして、これを回転の原動力とする姿勢にあり、これが最も広くおこなわれている。この技術の著しい特徴となっているのは、膝を柔軟にはたらかせること、脚と(腰から下)の動きにともなって必然的に生れてくる胴体の反対運動 -すなわち、上体を回転する方向とは逆にむけること、および外傾することにある。この軽快な脚さばき、ないしは、動きによる技術(Beinspieltechnik --米国では "below the belt action" -- 腰から下の動きといっている)は初心者でも正しい指導をうけさえすれば、高度の技術をめざしている上達者と全く同じように、満足すべき成果をあげうるのである。

この脚と腰のはたらきと最も緊密に関係しているのは前傾姿勢である。前傾といっても、これは決して脚の自由な動きを束縛する、あの極端な「締具によりかかったような姿勢」のことではない。正しい前傾は、踵をおしだして回転力を正しくはたらかしうるように、スキーのテールを調子よく軽くしうる姿勢であればよい。

両脚をぴったり揃えて使うのであるから、スキーも必然的に細く揃えて操作させる。ひとたびスキーをぴったり揃えて操作することを覚えてしまえば、広く開いて滑るより遥かに安定確実である。

さらに、この脚のうごきによる技術(Beinspieltechnik)の著しい特徴は、直立に近い姿勢、立ち上り沈み込みをきわめて楽になしうる姿勢にある。自由に、しかもいとも軽快に体を動かしうる姿勢で、ほんとうに名人のような気持で滑れるのであるから、スキーを習いはじめるその日から、この理想に近づいてゆけるのである。

このように滑るには、腕の保ち方、およびその動きも調和あるものでなければならない。型にとらわれたり、わざとらしさのために自然な動きを阻まれるようであってはならないのである。

つまり、腕は体全体の動きにともなって無理なく、無駄なく、とらわれなく全体のバランスをたもつように動くべきである。

以下に述べる技術解説は、生徒の滑り方がよいか悪いかを判断するのに大いに役だつであろうし、また同時に、自分の技術を矯正してゆくうえにもよき参考となろう。



→ 歩行、滑走、方向変換




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