2013年11月5日火曜日

釜臥山スキー場 [青森]



話:立木明広


八甲田を離れるまぎわ、平井君に

「青森で、どこか面白いスキー場ない?」と聞いてみた。

彼はしばし考えた後

「”陸奥湾にすべり込むようなスキー場”がありますよ」とのこと。

そこは、本州最北端のスキー場で、むつ市に隣接している『釜臥山スキー場』だという。僕たちは「陸奥湾にすべり込む」というフレーズに刺激され、さらに北上することを決めた。



下北半島をしばらくクルマで走っていると、陸奥湾を挟んだ対岸にスキー場が見えてきた。対岸から見ていても、”海にすべり込んでいく”ようなロケーションであることがよくわかる。

ここにも子供たちの姿が目立つ。真っ青な空のしたを海に向かって元気に”すべり込む”子供たちの姿を見ていると、なんだかとても嬉しくなる。田舎ではじつにたくさんの子供たちが元気にスキーをしているのだ。




しかしその反面、一見とても平和にみえる釜臥山からの景色も、その目線の少し先には東通村の原発や六ヶ所村の核処理施設などが林立していた。人々の目に触れないような場所に隠れるように立ち並ぶ物々しい鉄柵と巨大な建造物に、何ともいえない違和感を抱いた。



幸いにも、これまで山とスキーを通し、世界中のさまざまな場所を訪れる機会を得ることができた。その経験から、他国と比較してもやはり”日本の美しさ”は際立っていると思う。

これから、とくに子供たちや若い世代の人たちに、僕ならではの視点でスキーや山の素晴らしさ、そして日本の美しさを伝えられるような活動を続けていきたいと思う。

この国の美しさをより深く知ることが、この国をより良い方向へ向かわせるための第一歩につながる気がする。



引用:豪雪の北東北をめぐる旅『POWDER SKI 2014 winter
画像:nico-home


鈴木紀行と「ティートン・ブロス」



話:阿部雅彦

鈴木紀行とはじめて出会ったのは1999年。ジャクソンホール(ワイオミング州)で4年間、スキーとカウボーイ・ライフを堪能したという彼に、コラムの執筆依頼をしたのが始まりだった。

屈強な身体と人懐っこい表情。サッカーのトップ選手として活躍していた経歴を聞くと、”雲の上のような存在”に思えた。実際、一緒にフィールドに立つと身体能力の高さに驚愕した。

ただし、当時の彼はスキーの世界においては”何者でもなかった”。純粋にすべることが好きで、英語が得意な若者。出会った当時、彼は花屋さん。しかし、鈴木の”スキーにかける想い”は本物だった。その後、本格的にスキーの世界へ。

2008年にドメスティック(国内)アウトドアウェア・ブランド「ティートン・ブロス」を設立。以来、自分たちが本当に作りたい、欲しいウェアを追求。






ティートン・ブロス(Teton Bros)のアルパイン・ジャケット『ツルギ・ジャケット』は、日本ブランドとして初めて、アメリカの「ポーラーテック・エイペックス・アワード」賞を受賞。

”本アワードは、米国ポーラーテック社が世界中の新製品から、機能性やデザイン性、先進性などの基準を元に、データのみでなく実際のフィールドテストも行って審査する権威ある賞だ(『POWDER SKI』誌)”

今回受賞した「ツルギ・ジャケット」は、開発に2年の歳月を費やし、軽量化を図りながら必要な全機能を搭載した”アルパイン志向渾身の製品”に仕上がっている。



抜粋:『POWDER SKI 2014 winter

2014 スノー・ウェア 3選


2014 スノー・ウェア 3選
『POWDER SNOW』誌(2014 winter)より



MAMMUT(マムート)
アリエスカ

”オフピステに必要な高度な防水性と透湿性に、温かさを加えた究極の一枚”


アリエスカ(ジャケット&パンツ)は、マムートが誇るSnowカテゴリーのハイエンド・モデルだ。

ゴアテックスらしい最高の防水性・透湿性に、裏起毛の保温性をプラスしたソフトシェル・3レイヤーを採用し、重ね着によるストレスを軽減。過酷な環境での動きやすさを追求したモデルとなっている。

スキーヤー・半田譲は言う。「特徴的な”斜めジッパー”は、アゴの真ん中で干渉せず快適です。アゴひげにジッパーがくっつくというメンズの不満も解消。短い方のジッパーは、吹雪のなかのハイクアップ中に口元のエアスペースを確保するのに有効だし、デザインのアクセントにもなっています。パンツはややゆったり目。サスペンダーと、ビブと呼ぶには控えめなパウダーガードも好みで取り外しOK。ガイド、プロとしての活動をふくめハードに使用していますが、”とにかくタフで頼れる一着”」

防滴ジッパーのサイド・ベンチレーションを搭載したアリエスカ・パンツをアリエスカ・ジャケットに取り付けることで、深い雪で豪快にすべるスキーヤーにとって究極のコンビに変身するなど、個性が光るウェアだ(評:『POWDER SNOW』誌)






Black Diamond(ブラック・ダイヤモンド)
ドーンパトロール

”しなやかさと汗ヌケのよさに、絶大な防水性をプラス”


クリーン・クライミングの理念に基づき、安全性と扱いやすさ、環境を考慮したギアを開発し、業界をリードしてきたブラック・ダイヤモンドが、ついにアパレルに本格参入してきた。その第一弾でありフラッグシップ(最高峰)となるのが、ドーンパトロール・ハイブリッド。

ハイブリッドの名が示すとおり、ストレッチウーブン・ナイロンシェル(ストレッチ性と撥水性の高さで定評のあるショーラー社)をベースに、3層防水ラミネートを配したハイブリッドのソフトシェルだ。

ソフトシェルは防水性に不安を感じるが、ナノ・スフェア(超撥水加工)を施し、パウダーはもちろん、ミゾレ混じりの雪にも対応。スタッフの萩原修氏は言う、「胸やヒザ、肩など、より雪に触れやすい部分は防水ラミネートを採用。胸部の防水ラミネートは風対策も兼ねますし、肩部はスキー板を担いだときに傷みにくいという利点もあります」。

なんといっても素材のもつ”しなやかさ”は、滑走時の動きに追従してくれるのでストレス知らず。フィールド検証を重ねて最高のギアを生み出してきた同社の姿勢は、アパレル開発にも継承されていた(評:『POWDER SNOW』誌)。



Teton Bros(ティートン・ブロス)
TBジャケット、ムージー・ジャケット

”熟成を重ねるごとに輝きをます「ジャパン・クオリティ」を体感せよ”


2008年にスタートを切った日本製アウトドアウェア・ブランド「ティートン・ブロス」。

”ジャパン・クオリティ”を強く打ち出すブランドは、シーズンを追うごとに品質や着心地、デザインの熟成を重ね、2012年にはポーラテック・ネオシェル素材を採用した国内初のアウターシェルを登場させた。このモデルをきっかけにブランドの注目度が格段に高まり、現在は、プロアマ問わず多くのライダーが注目する日本製ブランドとして確固たる地位を確立しつつある。

ここで紹介する「TBジャケット」は、同ブランドの創業当初からのフラッグシップ(最高峰)モデル。ソフトシェルとハードシェルのハイブリッド素材で、透湿性に優れたポーラテック・ネオシェルを使用することで、厳しい状況下でも快適なウェア内環境のもとに滑りを楽しむことができる。

そして、ミッドレイヤーに「ムージー・ジャケット」をチョイスすると、より快適さが増す。襟が高くフードのないミッドレイヤーは寒気の流入を防ぎ、ミッドのロフト内で暖められた空気を逃すことがない。そのうえ、とても軽量で、ロング・ディスタンスをともなうBC(バック・カントリー)でも快適性を維持してくれる逸品だ(評:『POWDER SNOW』誌)。



シルバートン・マウンテン(アメリカ)



アメリカ・コロラド州の田舎町に

リフト一基のみが架かるスキー場がある



小さなローカル・スキー場と思われがちだが

敷地面積は東京ドーム157個分の広さをもつ、

上級者限定の「急斜面パウダー天国」と呼ばれる場所だ



Silverton Mountain
シルバートン・マウンテン





話:阿部雅彦

”天気は上々、申し分ない。

それでも、皆でかこむ朝のテーブルはどこか淡い緊張で包まれていた。

全米一の標高の高さと、急斜面をほこるエキスパート向けのスキー場。

誰しも慎重になる”




2014『POWDER SKI』誌より

2002年1月19日に創設。チェア・リフト1基のみが架かる、上級者向けスキー場。東斜面、西斜面、北斜面と雄大な滑走エリアを誇る。

自然にロウ・インパクト(低負荷)な作りで、最低限の経費で運営可能。ただし、ガイド・システムやアバランチ(雪崩)コントロールには想像以上の力を注ぐ。「アバランチ・コントロールはもちろん、パウダースノーが溜まる斜面を効率的に残すなど、ガイドやスタッフが日々エリアをコントロールしている(阿部雅彦)」。

グルーミング(圧雪)バーンは一切ない。ガイドと一緒にすべるのが基本。スキー場には一日80人以内。ガイドひとりに付き、ゲストは8人まで。ただし、”ガイド・オンリー期間”以外はガイドなしでも滑走可(昨季のガイド・オンリー期間は1月17日〜3月31日)。

リフトは9時スタート。ガイド付きは通常、8時15分集合。12月15日〜1月13日と4月14日はアンガイデッド(ガイドなし)だが、ガイド付きもできるので詳しくはホームページをチェック。

アクセスはデュランゴ空港から83km、モントローズ空港から80km。全米で最もエキスパートなテレイン(地形)をもつエリア。



”空気が薄いので、しっかりと深い呼吸を心がけながら

ゆっくりと一歩一歩ハイクアップする


頂上ちかくの標高4,000m付近にたどり着く

ふと視線を下げると、すべり出しが斜度40°を超す超急斜面

一本目からハードなシチュエーションだ”






「今日の午後、ヘリが1フライト空いているけど、参加しないか?」

$159 A DROP, $1,000 ALL DAY

ハットの扉に貼ってあった、ヘリスキーのビラを目にしていた

そして、心のどこかで引っかかっていた



1ドロップ・159ドル(約1万6,000円)

決して高くない


しかも、フラビオが声をかけてくれたということは

僕らの腕前をみて誘ってくれているのだ


シルバートンのガイドは優しさと厳しさを併せもつ

実力がない者を難しい斜面に連れて行ったりしない


決断は迅速

誰ひとり迷うことなく、ヘリスキーに参加することを決めた

オスカーは喜びを隠さず、ステファンは目を輝かせ

坂口と岡崎は”はじめてのヘリスキー”に興奮していた






間違いなく、この旅で最高の滑走シチュエーションだ

鈴木と何気なく視線が重なる

言葉をかわす必要はない


「この一本、悔いなく楽しもう」

そんな声が表情から伝わってくる


恐怖心はない

すべりたい場所を滑走できる

スキーヤーとしてこれ以上の幸せはない






昔からよく言われていた

「ラインを選ぶのはオマエ自身

前の人がすべったラインではなく、自分の意志でラインをすべるんだ」と


ようやくそれができた瞬間だった



極上の浮遊感とスピード感を味わいながら

皆の待つポイントへすべり込むと、大の字に倒れ込んだ


雪は冷たく、空がきれいだ

ただただ、うれしかった






抜粋文:『POWDER SKI 2014 winter



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シルバートン・スキーをもっと楽しむTips(コツ)

Durango Mountain Resort
デュランゴ・マウンテン

標高3,000mを優に超え、圧雪斜面のないシルバートン・マウンテンでいきなり滑るのはお勧めではない。まずはここ、デュランゴで”足慣らし”を。

ベースで標高2,680m、トップで3,300m。フロントサイドとバックサイドに10基のリフトが架かり、バリエーションに富んだ滑走が可能。また、インストラクターが丁寧なレッスンをしてくれるのもいい。ゲレンデの目の前には、プールや温泉もあるホテル「デュランゴ・マウンテン・クラブ」がある。クラシック・スキーなどを生かした部屋は落着きがあり、上質なスキーホリデーが楽しめる。

また、シルバートンのベース・タウンとしても利用できるデュランゴ。鉱山の町として栄えた西部開拓時代の姿をのこした歴史的な街並は美しい。一人当たりのレストラン数がサンフランシスコ以上にあることから、美味なレストランが勢揃い。今回、取材班が訪れたステーキハウス「ORE HOUSE」では、おいしいワインと上質でボリューム満点のステーキが食せる。地ビールの店も注目。

さらに、このエリアでは温泉施設も見逃せない。基本、水着着用でリフレッシュできることは間違いなし。宿泊施設も多く、お世話になった「GENERAL PALMER HOTEL」は1898年創業のクラシックホテル。落ち着いた内装で部屋も広かった。

(阿部雅彦 2014『POWDER SKI』誌)