アメリカ・コロラド州の田舎町に
リフト一基のみが架かるスキー場がある
小さなローカル・スキー場と思われがちだが
敷地面積は東京ドーム157個分の広さをもつ、
上級者限定の「急斜面パウダー天国」と呼ばれる場所だ
Silverton Mountain
シルバートン・マウンテン
話:阿部雅彦
”天気は上々、申し分ない。
それでも、皆でかこむ朝のテーブルはどこか淡い緊張で包まれていた。
全米一の標高の高さと、急斜面をほこるエキスパート向けのスキー場。
誰しも慎重になる”
2014『POWDER SKI』誌より
2002年1月19日に創設。チェア・リフト1基のみが架かる、上級者向けスキー場。東斜面、西斜面、北斜面と雄大な滑走エリアを誇る。
自然にロウ・インパクト(低負荷)な作りで、最低限の経費で運営可能。ただし、ガイド・システムやアバランチ(雪崩)コントロールには想像以上の力を注ぐ。「アバランチ・コントロールはもちろん、パウダースノーが溜まる斜面を効率的に残すなど、ガイドやスタッフが日々エリアをコントロールしている(阿部雅彦)」。
グルーミング(圧雪)バーンは一切ない。ガイドと一緒にすべるのが基本。スキー場には一日80人以内。ガイドひとりに付き、ゲストは8人まで。ただし、”ガイド・オンリー期間”以外はガイドなしでも滑走可(昨季のガイド・オンリー期間は1月17日〜3月31日)。
リフトは9時スタート。ガイド付きは通常、8時15分集合。12月15日〜1月13日と4月14日はアンガイデッド(ガイドなし)だが、ガイド付きもできるので詳しくはホームページをチェック。
アクセスはデュランゴ空港から83km、モントローズ空港から80km。全米で最もエキスパートなテレイン(地形)をもつエリア。
”空気が薄いので、しっかりと深い呼吸を心がけながら
ゆっくりと一歩一歩ハイクアップする
頂上ちかくの標高4,000m付近にたどり着く
ふと視線を下げると、すべり出しが斜度40°を超す超急斜面
一本目からハードなシチュエーションだ”
「今日の午後、ヘリが1フライト空いているけど、参加しないか?」
$159 A DROP, $1,000 ALL DAY
ハットの扉に貼ってあった、ヘリスキーのビラを目にしていた
そして、心のどこかで引っかかっていた
1ドロップ・159ドル(約1万6,000円)
決して高くない
しかも、フラビオが声をかけてくれたということは
僕らの腕前をみて誘ってくれているのだ
シルバートンのガイドは優しさと厳しさを併せもつ
実力がない者を難しい斜面に連れて行ったりしない
決断は迅速
誰ひとり迷うことなく、ヘリスキーに参加することを決めた
オスカーは喜びを隠さず、ステファンは目を輝かせ
坂口と岡崎は”はじめてのヘリスキー”に興奮していた
間違いなく、この旅で最高の滑走シチュエーションだ
鈴木と何気なく視線が重なる
言葉をかわす必要はない
「この一本、悔いなく楽しもう」
そんな声が表情から伝わってくる
恐怖心はない
すべりたい場所を滑走できる
スキーヤーとしてこれ以上の幸せはない
昔からよく言われていた
「ラインを選ぶのはオマエ自身
前の人がすべったラインではなく、自分の意志でラインをすべるんだ」と
ようやくそれができた瞬間だった
極上の浮遊感とスピード感を味わいながら
皆の待つポイントへすべり込むと、大の字に倒れ込んだ
雪は冷たく、空がきれいだ
ただただ、うれしかった
極上の浮遊感とスピード感を味わいながら
皆の待つポイントへすべり込むと、大の字に倒れ込んだ
雪は冷たく、空がきれいだ
ただただ、うれしかった
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シルバートン・スキーをもっと楽しむTips(コツ)
Durango Mountain Resort
デュランゴ・マウンテン
標高3,000mを優に超え、圧雪斜面のないシルバートン・マウンテンでいきなり滑るのはお勧めではない。まずはここ、デュランゴで”足慣らし”を。
ベースで標高2,680m、トップで3,300m。フロントサイドとバックサイドに10基のリフトが架かり、バリエーションに富んだ滑走が可能。また、インストラクターが丁寧なレッスンをしてくれるのもいい。ゲレンデの目の前には、プールや温泉もあるホテル「デュランゴ・マウンテン・クラブ」がある。クラシック・スキーなどを生かした部屋は落着きがあり、上質なスキーホリデーが楽しめる。
また、シルバートンのベース・タウンとしても利用できるデュランゴ。鉱山の町として栄えた西部開拓時代の姿をのこした歴史的な街並は美しい。一人当たりのレストラン数がサンフランシスコ以上にあることから、美味なレストランが勢揃い。今回、取材班が訪れたステーキハウス「ORE HOUSE」では、おいしいワインと上質でボリューム満点のステーキが食せる。地ビールの店も注目。
さらに、このエリアでは温泉施設も見逃せない。基本、水着着用でリフレッシュできることは間違いなし。宿泊施設も多く、お世話になった「GENERAL PALMER HOTEL」は1898年創業のクラシックホテル。落ち着いた内装で部屋も広かった。
(阿部雅彦 2014『POWDER SKI』誌)
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